今回、日本不動産鑑定士協会連合会等の関係団体のご協力を得て、わが国に大量に存在する太陽光設備のデファクトとなる資産評価手法と研修プログラムの開発に着手しました。
プロジェクトの背景
2011年の管内閣末期に急遽立法化され、2012年7月にスタートした「再生可能エネルギーの固定価格買取 (FIT) 制度」は大量の新規太陽光発電業者の参入を招き、総投資額で2〜2.5兆円と言われ”太陽光発電バブル“を発生させ、2016年末現在、売電を目的とした発電規模が10kW以上の産業用設備の数は、認可ベースで全国に90万カ所(内発電量が1000kwを超えるメガソーラーは1万カ所)で竣工済み設備は50万カ所と莫大な数字となっています。
添付資料
-ソーラーパネル設置件数統計
法律の不備もある中、悪質な物件仲介業者や廉価なEPC(設備の設計・施工)会社も出没する中設備の粗製濫造も発生し、設計・施工上の不備を抱える施設も露呈してきており、今後時間の経過とともに更に増えてくることが懸念されています。厳しい意見によれば、今後設備の維持運営に必要となる経費が、通常の想定費用を大きく上回ることが想定されるような設備は全体の半数以上との指摘もあります。大きなプロジェクトファイナンスを組まれた案件でも、竣工検査で大きな問題が露呈することも少なからずあるようで、ましてや発電量が1メガ以下の案件やさらに小さい低電圧の案件に至っては更なる不透明感が存在します。
このような事態は長期安定電源としての太陽光発電の健全な普及を目指す国のエネルギー政策を根幹を揺るがしかねない状況にあり、この状況の是正にむけて、経産省資源エネルギー庁が一昨年より太陽光発電事業の評価ガイドの作成に着手し、この6月中にも公表の予定です。ガイドは現在問題の原因となっている設計・施工にフォーカスし、民間での自主的な活用を前提とした、発電事業者が保有する設備の①現状の理解(内包されるリスクの有無)、②修繕や保守点検や売却の推奨、③中古市場の活性化等を目指すもので、エネ庁としても今後その普及を協力に推進して行く予定です。
現状の太陽光発電設備の資産評価
太陽光発電設備については、これまで不動産鑑定士が不動産評価と一緒に実施さるケースが多くありましたが、設備からの想定収益をベースとした収益還元によるDCFによる評価が一般的で、大型物件についてはER(エンジニアリングレポート)等を参照しているケースはありますが、今回のガイドの主題となっている設置に関する設計・施工・設置に係る要素も加味した専門的な機械設備の評価手法に基づく評価はされていないのが実情かと思われます。また、コストアプローチによる評価についても、インカムアプローチで算出された評価額にさや寄せしたり、新規再調達コストの算定でも設置業者の見積書の金額を採用する等、機械設備評価としての専門性に欠けるものが多いように見受けられます。
JaSIAでの対応
JaSIAでは、本件の社会的意義に絡み、未だ日本では発展途上の専門的な機械設備評価に対する社会的に認知度に向上及び会員に対するビジネスチャンスの提供の好機と認識し、一昨年よりJaSIA会員で太陽光発電の設計・施工管理、運営(アセットマネジメント)の専門会社で、エネ庁からの要請を受けて今回の評価ガイド作成に於いて中心的な役割をはたしている株式会社CO2Oと共同で、当該ガイドをベースとした専門的な機械設備評価手法の確立と現場での実地研修を含めた研修プログラムの策定に取り組んできました。
幸い今回の取組に対しては、評価ガイドの幅広い活用を目指すエネ庁の理解と支援、不動産鑑定士協会連合会(JAREA)からのご理解と研究メンバー4名の派遣、太陽光発電設備への投資ファンド等を組成する大手金融機関等の賛同と支援等、ご協力のお約束も得ることが出来ました。今後、以上の皆様のご協力もいただいて、今回開発します評価手法を幅広い皆様ご紹介し、その定着に向けてたご理解をお願いしてゆく予定です。
研究会の発足
研究会はJAREAからの委員4名、CO2O社の技術スタッフ、JaSIA会員から有志、金融機関の方等、その他関係団体からもお招きして、今後月に1~2度お集まり頂き、9月頃の完成と、実地研修を含めた研修プログラムもスタートさせる予定です。今回の評価手法では投資家や金融機関にとって有用な設備に関する有用な情報を盛り込むことと、大量に存在する設備にも敏速且つ効率的に対応できるように、評価フォーマットも作成します。
本件に関するお問い合せ:
(一社)日本資産評価士協会 若山 和夫
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